ダビング10容認の背景:SaLP
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ダビング10容認の背景 [日記・雑記]

 ダビング10は、権利者側が一転して容認07/04(Fri) 04:00から施行されることになりましたが、根本的な問題はもっと深いところにあるようですね。

 結論から言えば、「強固なDRMが出て、補償金の必要が無くなるであろう。ただ今はそうなっていないので一時的に課金対象を増やしたい」という考えを持つ(文部科学省下の)文化庁、「コピーワンスでの不便(ムーブ失敗でコンテンツが失われること、DVDにムーブすることでHD→SDになることなど)だという苦情発生により、それを改善しようとダビング10を打ち出した」総務省、そして「ダビング10を勝手に施行され、補償金についてもBlu-rayなどに勝手に課金されるように決められてしまった」経済産業省の3つの省庁と、直接の権利者側とメーカー側であるJEITAが、どう転んでもお互いデメリットが出る為に問題がこじれています(総務省に関して言えばコピーワンスの不便を解消することだけが目的なので、今回の決定で満足した結果を得られたわけですが)。

 

 その中でもとくに経済産業省は、自分の管轄となっているメーカー側の問題である、「私的録音録画補償金制度にBlu-ray Discを追加された文化審議会」と、「ダビング10が施行されるように決定された会議」の2つの会議のどちらにも参加しておらず、自分の管轄について勝手に決められたことが不満だということで、どちらに転んでも不満爆発というわけです。

 

 それぞれの立場としては、

  • 文化庁

 完全無欠なDRMが登場していない現在は補償金対象を増やしたい。

 

  • 総務省

 コピーワンスで苦情が来たのでそれを処理したい。

 

  • 経済産業省

 ダビング10が実施されることは本来我々が決めることなのに話し合いに参加しておらず、補償金が拡大されるのも(機器の値段が上がる)我々としては不満で、これ(文化審議会)も話し合いに呼ばれていない。

 

  • 権利者

 コンテンツを制作している権利者側の意見を反映したい。

 

  • JEITA

 ダビング10でコピーが緩和されても著作権保護による複製規制が掛かっている以上補償金は課するべきでない。

 

 

 

 こんな感じですね。ここでダビング10や補償金についてどう決まればそれぞれがどう感じるかは(ここで書くにはボリュームが大変になるので)みなさんで考えていただくとして、なぜ今回権利者側はダビング10を受け入れたのかです。

 

 簡単に言えば、文化庁案(Blu-ray課金)が通ったために、ここでダビング10を否定し続けたら「結局課金してもコピーワンスのままにして金だけ欲しいんだろ」と言われてしまい、権利者側は金づるだと言われてしまうこと(プレッシャー)が大きいでしょう。

 

 そしてこの中で、一見すると苦情処理であり、本質的な問題にあまり関与していなさそうな総務省ですが、総務省はかなり問題をややこしくしているように感じます。総務省のスタンスとしては「苦情に対処できればそれで良い」→「ダビング10でもEPNでも、現状のコピーワンスにより起きた苦情を処理できれば補償金でこじれようが、それは(文部科学省下の)文化庁がすることであり、総務省の管轄ではないのでどうでもいい」と捉えることも十分に可能であり、そうしたことにより権利者側の行動に(ダビング10容認せざるを得ない)制約が起きてしまったこと、そして勝手に決められた経済産業省という構図ができあがってしまった一因にはなっているので、総務省が傷を深くしてしまったことも否めません。もっとも我々消費者としてはダビング10が実施されることはコピーワンスよりはマシな訳ですが、権利者としてもそうせざるを得なくなり不満なことに代わりはないわけで、『あえて逆を行った』、JEITAは話を聞かなすぎる。と叩くことしかできなくなってしまったわけです。

 

 

 

 結局、よくよく見ると本質的な解決は何一つなされてはいないようで(経済産業省の問題から悪化したとも言えなくはない)、これからもそういった議論はやまないのでしょう。私としてはコンテンツの「タイムシフトまたはプレイスシフト」と、「違法コピー(流出的な複製)」は別問題にして考えればいいと思うのですが、前者については比較的負担の軽い制度にするにしても(前者と後者は相関性があるため)、そうするとどちらにせよ後者を厳しくする手段がなくなってしまうんですよねぇ。考えてみても、なかなか良い案が思いつかないものです。個人的にはタイムシフトとプレイスシフトは、出来ないと非常に不便なので文化庁が主張するDRMは正直実現して欲しくないという気持ちはありますが、実現案が浮かばない以上深く語ることも私は出来ません。

 

 ちなみにこの記事は1時頃書き出したので、考えて書くだけで2時間は掛かっています。だからどうと言うことでもないんですが、それだけ考えてもこの文量、なかなか難しい問題だと言うことを考えさせられます。


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かつぽん

ていうか・・・



権利者=金の亡者



・・・という図式は、もう消えないでしょうね。
我々こそ消費者向き?何言ってんだか。
本当に消費者を向いたDRMはEPNでしょうが!!
椎名とかいう親父の顔を見るだけで最近は吐き気がします。

現実としてレコーダーにとって保存なんて
年に1回するかしないか・・・だから、
どっちの転ぼうと、それこそコピーネバーでも
パッケージさえ出してくれれば全く文句のない俺なのに。
by かつぽん (2008-06-25 12:32) 

moonrabbit

まぁコンテンツが違法コピーによって権利を侵害されているのは事実ですし、企業としては死活問題ですからねぇ。ハードとソフトの重なるメーカーが多い日本では、次世代フォーマットには何としてもコピープロテクトを付けたいのは実情でしょう。
といってもこれだけメディアやコンテンツが多岐にわたり分散化されてしまっている現状では、メーカーの収入の単位コンテンツあたりの減少は必須ともいえますし、一概にコピーだけの問題だけとは言えないとは思いますが。

音楽制作会社は、どこも厳しいそうです、はい。
by moonrabbit (2008-06-25 13:08) 

はまちゃん

それぞれの立場によって見解が様々ですね。
なかなか難しい問題だし、これで落ち着くとも
思えない感じしますが…
by はまちゃん (2008-06-26 01:00) 

Riever

>かつぽんさん、nice!、コメントありがとうございます
12行目あたりはかなり過激な発言ですが(爆)、分からなくはないです。EPNでいいでしょうに、なぜ今まで出来たことを出来なくするのか、それも法的拘束力を持って、ですからね。
そのあたりが一番疑問に感じるところです。
消費者の多くは、映画はともかく他の番組で(保存する気で)録ろうなんてものはほとんどないのに、それにまでプロテクトを掛ける意味が分かりません。そもそも地上波はほとんど広告収入で成り立っているわけで、それを考えれば映画などをのぞく、パッケージ販売という手法をとらないモノは私的複製を規制する理由はあまりない気がするんですけどね。
by Riever (2008-06-26 18:58) 

Riever

>moonrabbitさん、nice!、コメントありがとうございます
何が一番効力があるかと言えば、何よりも違法アップロードの取り締まりだと思うんですよ。私的複製が出来たとしても、それが非常に速いスピードで拡散しなければ大きな経済損失にならないのでコピープロテクトを掛ける理由はなくなります。
それをした上で(若干の、コピーフリーに対する)補償金の値上げをするなら私としては問題ないのです。
もっとも、補償金がどういう道筋を辿って「制作者」に届いているのかを明示することが絶対条件ですが。

一番問題があるのは、たくさんメディアを作ってそれぞれにプロテクトを掛けている現状だと思います。タイムシフト・プレースシフトをしたいだけなのに、なぜそのようにメディアごとにお金を費やさなければならないのかが全く分かりませんから。
by Riever (2008-06-26 19:04) 

Riever

>ぞうさん、nice!ありがとうございます
by Riever (2008-06-26 19:05) 

Riever

>はまちゃんさん、nice!、コメントありがとうございます
大きな混乱は、2011年7月末からでしょうね。地デジのコピーに対する不便さの問題は(特に地方では)そこまで多く知られてはいないでしょうから、それまでにこの状況が続いていればその後の混乱はあるでしょう。
それにどう対応するのか、私は楽しみに待つことにします。実際テレビなんて見ないので関係ないですし、高みの見物をしようかなと。
by Riever (2008-06-26 19:09) 

Riever

>spin@片桐凛さん、nice!ありがとうございます
by Riever (2008-06-26 19:10) 

Riever

>Virgoさん、nice!ありがとうございます
by Riever (2008-06-26 21:11) 

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